Ha Ka Se+ STORIES 先輩博士の声

STORY 03
海外の自然環境を舞台に
地球科学を探究し,
模索したキャリアの広がり
北島 卓磨
KITAJIMA Takuma
次世代精鋭人材創発プロジェクト
自然科学研究科 自然システム学専攻
2023年度9月期修了

01 博士課程で取り組んだ研究は?

色々な国・地域の研究者と共に地球科学と向き合う魅力

モンゴルのアルカリ塩湖に析出する特殊なMg炭酸塩に着目し、季節変化によるアルカリ塩湖の水質と特殊なMg炭酸塩への影響について、観測と実験の両面から研究を行い、アルカリ塩湖のCO2固定について示唆を与えました。河川の終点にできるアルカリ塩湖はpHが高く、炭酸塩が常に析出しています。このような湖の炭酸塩は大気CO2を元に析出している可能性があり、ゼロエミッションの実現に向けたネガティブエミッション技術への応用が期待されています。
日本には無い自然環境を対象としていたため、海外での研究経験を多く積みました。世界中の色んな場所で、色んな人達が地球科学の研究に向き合っていると実感できたことは、研究に限らず価値観に深く影響を与えてくれました。地球科学は太陽系全てを対象とするため、どんな分野とも繋がることができる発展的で興味の尽きない学問です。

02 博士進学を決めたきっかけは?

早期の研究成果創出が
博士進学の決め手に。

最初に博士後期課程への進学を意識したのは博士前期課程在籍時に、モンゴルで野外調査を行っていたときでした。調査中に指導教員に相談し、私なら博士進学も良いと思うと後押しされました。進学を決意したのは、博士前期課程2年次の4月頃、主著論文が出版されたことを受け半年間短縮して早期修了することを決めたときです。博士進学にあたっては、経済的支援を期待して日本学術振興会DC1およびDC2に申請しましたが、いずれも不採用となり経済的には厳しい時期がありました。次世代精鋭人材創発プロジェクトに採用されて以降は、奨励金や授業料免除はもちろん、研究費の支援が安定した研究計画を進める上でとても有益でした。
研究成果を論文に創り上げることは想像以上に大変な労力でした。しかし、好きな研究が続けられたこと、色んな地域・国の研究者と友人になれたこと、人と話すことやプレゼンテーションが上達したこと、何より、理論的な思考が染みついたことは、博士後期課程での研究生活があったからこそと思います。
また、HaKaSe+「異分野への扉」で、人文、自然科学、生命科学、それぞれの研究科が一堂に集まりグループに分かれて研究紹介を行ったことは、専門的な用語や表現を英語で臨機応変に言い換え、全く異なる分野の研究者に伝える必要があり、これまでにない貴重な経験でした。

03 今後のキャリアと後輩へのメッセージ

博士進学はキャリアの選択肢を広めること

地方の公的環境研究所において、研究職としてのキャリアを歩み始めました。私の研究の特徴は、基礎研究的な部分と直接環境対策へ結びつく発展的な部分の両方の側面を併せ持つことです。今後は、同研究所で地域的な環境研究を継続して行うとともに、全球的な環境研究へと発展させることができるよう、研究に邁進していきたいと思います。
博士進学を考えることは自分の選択肢を増やすことだと思います。博士前期課程在籍にも就職活動を行いましたが、博士学位取得者を採用する企業が多いことに気づきました。私は就職と博士進学を比較したとき、人生の選択肢を考えました。博士前期課程修了後に就職をしたら、そう簡単にはアカデミアに戻ることができません。しかし、博士進学をしたら博士後期課程修了時にもう一度、自分がアカデミアに残りたいのか就職したいのかを、自分自身に問いかけることができます。少しでも研究生活に未練があるのであれば、博士進学をしてほしいと思います。