01 博士後期課程で取り組んだ研究は?
日々新しい発見にワクワクしながら実験し、失敗は新たな研究展開の原石に
私の専門は有機化学、特に低分子化合物を合成するための反応開発(方法論の開拓)です。有機化学の教科書に登場しそうなほどシンプルな化学構造ながらも、実は作られたことが無かった幻のアンモニウム塩の合成研究に取り組んでいました。挑戦的な課題に取り組み、数々の壁にぶつかりながらも遂に合成を達成したときの喜びは特別なものでした。この研究成果は、卓越大学院プログラムのWebサイトでも取り上げていただきました。前例のない化学反応を開拓する、まさに0から1を生み出す研究領域であり、日々新しい発見があり、ワクワクしながら実験を行っていました。実験は想定通りに行くことの方が圧倒的に少ないのですが、こうした予期せぬ結果は別の新しい化学反応に展開される原石となり得るため、失敗が結果的に良かったということもあります。このため、実験が上手くいかなくても何か良い方向に繋がらないかと考えながら研究に取り組んでいました。
02 博士後期課程で得た経験と、今後のキャリアは?
博士は100%の時間を研究に費やせる貴重な期間
私は、元々研究者になりたいと考えており、大学入学時点で博士後期課程への進学を意識していました。博士後期課程の3年間は、100%の時間を研究に費やせる貴重な期間でした。研究や自己研鑽にまとまった時間を取ることができるのは博士進学のメリットだと思います。また、卓越大学院プログラムの連携先機関である、University of British Columbia(カナダ)で海外研究留学を実施したのは、大変有意義な経験でした。研究留学当時は修了後のポスドクとしての研究留学先を探していました。3週間程度の短期間でしたが、実際に実験を行い、ポスドクとして進める研究内容について理解を深めることができました。
修了後は、研究内容の自由度や化学の面白さを学生に直接伝えられる点からアカデミアを希望し、東北大学大学院薬学研究科で助教として研究を続けています。今後は自分の面白いと思う化学を究めて、多少なりとも日本の化学の発展に寄与できたらと思います。また、次世代の研究者となる学生諸氏に化学の面白さや研究の魅力を伝えることも、アカデミアで研究を行う者の重要な使命であると認識しているので、そちらにも力を入れてきたいと思います。
(写真は、幻のアンモニウム塩合成を達成した本人(左)と金沢大学医薬保健研究域薬学系 藤田 光助教)
03 後輩へのメッセージ
ぜひ、博士(後期)課程で一生役立つ経験を!
このページを見ている学生の皆さんは博士進学に少しでも興味を持っている人あるいは迷っていて決めきれていない人かと思います。そんな人には絶対に進学することを勧めます。何か新しいことにチャレンジしようとするときに「自分はそんな柄じゃない」、「成績が悪い」、「時間が無い」等のやらない・やれない理由を並べて行動しない人が沢山います。後輩の皆さんには、そのようなことに頭を使うのではなくて、どうすれば問題を回避・解決しつつ実現できるのかを考えて積極的に色々なことに挑戦して欲しいと思います。今は、博士(後期)課程への進学や研究に対しての支援も充実しており、大変恵まれた環境で研究に取り組むことができます。
博士(後期)課程では研究内容や成果が大切であるのはもちろん、研究に対する向き合い方や課題解決に向けて何を考えて取り組むかを学ぶことも大変重要です。こうした意識で研究に取り組めば、知識はもちろん、マインドの面でも成長できると思います。博士(後期)課程の3~4年間は長いように感じるかもしれませんが、この期間に培った力は公私ともに一生役に立つ能力になるので、十分見合った投資期間だと思います。今だけを見つめるのではなく、将来の自分を見据えて、夢を持って頑張ってほしいと思います。