Ha Ka Se+ STORIES 先輩博士の声

STORY 08
失敗をチャンスに
多方面で活躍する研究者を
志して
𠮷野 真優子
YOSHINO Mayuko
ナノ精密医学・理工学卓越大学院プログラム
日本学術振興会特別研究員(DC1)
医薬保健学総合研究科 医学専攻
2023年度修了

01 博士進学を決めたきっかけ、博士課程で取り組んだ研究は?

未来への不安を越え、探究心を追いかけた日々

修士課程への進学時から博士進学を意識していましたが、博士課程修了後のキャリアへの不安から決心はついていませんでした。しかし、研究に没頭する日々の中で次第に探究心が強まり、研究テーマをさらに深く掘り下げたいという気持ちが将来への不安に勝り、博士進学を決意しました。
博士課程ではイタチの一種であるフェレットを用いて、ヒトやサルなどの高等哺乳動物で特徴的にみられる「U線維」と呼ばれる神経線維束の特性について研究しました。U線維は近隣の大脳皮質領域をつないでおり、脳の高次認知機能にとって重要であると考えられています。また、様々な神経・精神疾患に関与していることが報告されており、U線維の特徴を明らかにすることは脳機能と疾患病態の理解にも繋がります。
私はU線維の研究を通して、まだ誰も知らない新たな知見を自らの手で明らかにしていくところに楽しさを感じていました。仮説とは異なる結果になるなど壁にぶつかることもありましたが、その予想外の結果が本質的に重要で面白い研究につながりました。そのため、仮説とは異なる結果が得られた時は落胆することなく、むしろチャンスだと捉えて研究に取り組んでいました。

02 博士進学で得られたこと、よかったことは?

異なる視点からのアイデアが成長のきっかけに

博士課程では学会発表の機会が増え、他の研究者から多くの意見やアドバイスをもらうことで、新たな視点を得ることができました。加えて、どんな職業に就くにしても役に立つ論理的思考力や問題解決能力も身に付いたと思います。論文投稿後のリバイスは追加の実験などで非常に大変でしたが、この経験は私にとって大きな成長の機会となりました。
また、HaKaSe+が開催する「異分野への扉」では、与えられた研究課題の解決策を異分野のHaKaSe+選抜学生と共に探る機会となりました。私自身では全く思いつかないような意見が多く出て、最終的には様々な分野を融合させた解決策を提案することができました。この経験から、研究を面白く発展させるためには異分野の研究に目を向ける必要があると改めて感じることができました。
研究を通じて培われた論理的思考力や問題解決能力は、現在の仕事で非常に役立っています。さらに、多様なバックグラウンドを持つ研究者と交流した経験は、異分野への理解やコミュニケーション能力の向上に繋がりました。博士課程で学んだことは、単なる専門知識にとどまらず、社会人として生きていくために必要な幅広い能力を養う上で、非常に貴重な経験だったと思います。

03 修了後のキャリアと後輩へのメッセージ

挑戦と失敗が新たな知見を切り拓くチャンスに

修了後、金沢大学のプロミシング・リサーチャー(育成助教)に採用され、引き続きU線維の研究に取り組んでいます。興味を持っている分野をより専門的に研究して発展させ、学術的な貢献をしたいという気持ちからアカデミアに残る道を選びました。最近では新たな研究手法を取り入れた実験にもチャレンジしており、日々その成果を見ることが楽しみです。また、学生を指導する機会が増え、より多くの人に研究の楽しさや面白さを伝えられるところにやりがいを感じています。
将来的には一つの分野に捉われず、様々な分野で活躍する研究者になりたいと考えています。所属する研究室で得た知見やHaKaSe+での経験を基盤に、新たな研究分野の開拓を目指していきたいです。
後輩の皆さん、研究には失敗がつきものです。努力をしたからといって必ずしも報われるわけではありません。だからこそ、仮説通りの結果が得られなかった時に、「これはチャンスだ!」という気持ちを持ち、広い視野でさらに研究に取り組んでほしいと思います。いくつもの困難を乗り越え、新たな知見が得られた時の喜びは何事にも代え難いものです。