01 金沢大学の博士課程への進学を決めたきっかけ、博士課程で取り組んだ研究は?
熱意溢れる研究者との出会いから、予防医学を追究する道に
学士課程3年次の研究室配属後に博士課程への進学を意識するようになりました。当時の教授のおかげで国際学会や研究会に参加する機会に恵まれ、情熱をもって研究に打ち込む多くの研究者たちと出会ったことで、私も自分の興味を深く追求したいと思うようになりました。
私は修士課程まで他大学で学びましたが、金沢大学では私の関心分野で著名な研究者が活躍しており、また、学際的かつ実践的な研究に取り組むことができる先進予防医学研究科は私の目指す研究キャリアに最適な環境だと感じ、進学を決めました。
私の研究領域は内分泌代謝学です。エネルギー代謝や臓器間ネットワークによる恒常性維持機構の理解をもとに、治療よりも予防に重点を置いて健康の本質を追求し、得られた知見を「健康で明るい社会」の実現に役立てたいと研究に邁進しました。複雑な身体の仕組みの包括的な理解に努めるこの研究領域は、単に疾患発症機序の解明だけでなく、予防医学の発展に貢献できる点で魅力を感じていました。
02 博士課程修了後の進路で重視した点は?
最先端の研究環境で、多様なバックグラウンドを持つ研究者との協働が、自身の成長に
博士課程修了後は、カルガリー大学(カナダ・アルバータ州カルガリー)で博士研究員として研究を行っています。北米最大級のがん研究施設において、代謝疾患との関連が深いがん細胞の生物学を研究テーマに、学生時代とは異なる新たな視点からがんの発生メカニズムや進行の解明に取り組んでいます。がん治療や予防法の発展に寄与する可能性がある研究であり、研究の社会的意義にやりがいを感じています。
大きな研究プロジェクトを一人で推進するには限界があります。世界の研究者と連携する中で新たな視点や知見を得て研究を深めていく必要があり、海外での研究経験を含めた国際的な研究ネットワークの構築が不可欠です。こうした考えを持つようになったきっかけの一つが、博士課程在学中にHaKaSe+及び卓越大学院プログラムの支援を受けて実施した短期留学です。現在の職場であるカルガリー大学の研究室へ研究留学し、最先端の研究環境や多様な文化背景を持つ研究者との交流が、自分の視野を広げ、国際的な研究の意義を実感する貴重な経験となりました。この経験が、海外で研究者としてのキャリアを歩む決意をさらに強くしました。
「好奇心」を大切にして真理を究めるとともに、次世代研究者の育成や研究成果の社会還元をも果たせる研究者を目指し、社会に価値ある成果を届けていけるようになりたいと思っています。
(写真は、カルガリー大学の研究室での様子)
03 博士進学で身に付けたこと、進学してよかったことは?
博士課程で培った粘り強さ、企画力、説明力、セルフマネジメント力が大きな自信に
博士課程では、研究者としてのスタート地点に立てた喜びがあった反面、実験や論文執筆、発表を通じて、自分の考えの甘さに気づかされる場面も多く、精神的・体力的に大変な時期もありました。しかし、粘り強く物事に向き合う力や、自分の考えを効果的に伝える能力を高めることができました。困難を乗り越える過程で得た成長や達成感は、博士号取得の価値だと感じています。そして、博士課程で培った粘り強さ、企画力、説明力は、研究者に限らずどのような職業でも役立つ普遍的なスキルだと思います。
また、研究を効率的に推進するためには、自ら進捗状況を適切に把握し、計画を立てて実行するセルフマネジメントが欠かせません。博士課程では、自分の研究を主体的に進める中で、目標設定や課題解決に必要なスキルを身に付けました。この「セルフマネジメント能力」は、現在、研究活動を行う上で、研究成果の向上や時間管理に直結しており、大きな強みとなっています。
また、HaKaSe+で開催された異分野の博士学生との交流会では、情熱を持って自分自身の研究に取り組む同世代とつながる貴重な機会に恵まれました。こうした場で得た刺激は、挑戦を続ける原動力となり、大きな励みになりました。
博士課程での研究を通じて得られる知識や経験は、視野を広げ、新たな可能性を切り拓いてくれます。
後輩の皆さんにも、自身の気持ちに素直に耳を傾け、支えてくれる周囲の人々や新たな出会いに感謝しながら、自身が選んだ道を歩んでほしいと願っています。