Ha Ka Se+ STORIES 先輩博士の声

STORY 05
自ら発見した研究の種を
追求した経験を活かし、
新たな分野で
企業を支える一員に
福田 茉佑
FUKUDA Mayu
ナノ精密医学・理工学卓越大学院プログラム
新学術創成研究科 ナノ生命科学専攻
2022年度修了

01 博士後期課程で取り組んだ研究は?

未知の現象を自ら解明することにワクワク感

らせん構造をとる高分子の構造制御について研究していました。高分子の構造制御は、高度な機能をもつ新規マテリアルの開発にもつながります。らせんには右巻きらせんと左巻きらせんがあり、巻き方向によって化合物に対して異なる応答を示します。巻き方向を制御することは物性を制御することに直結するため、重要な研究技術です。
私は、博士後期課程において2つの現象のメカニズムを解明しました。①極微量の添加物を添加することによって、らせんを一方向巻きに片寄らせることができること、②さらに時間とともに逆巻きのらせんへと転移することです。特に2つ目の現象は、学士課程4年次に私自身が偶然見つけたもので思い入れが強く、精力的に取り組みました。はじめはその現象が起きるメカニズムが見当もつかず、手探りで研究を進めていました。さまざまな仮説を立て、それを実証する実験を設計することは大変でした。しかし、「未知の現象を自分で解明する」というのはいかにも“研究”という感じがしてワクワクしながら研究していました。

02 博士進学を決めたきっかけ、進学してよかったことは?

視野が広がり、どんなことにも挑戦することで得られる成長を実感

最初に博士進学を意識し始めたのは、学士課程4年次で研究室に配属されて間もなくでした。配属先研究室にいた博士の先輩が活き活きと研究している姿を見て興味を持ちました。その後、研究を進める中で、自ら新たな研究の種を発見し、その研究テーマを自分の手でやり切りたいという気持ちが芽生えました。さらに、国際学会や留学先で知り合った博士の先輩と交流する度に博士進学への思いを強くし、決意しました。
博士後期課程への進学後は、後輩の指導や学会参加を重ねることで他の人の研究にも意識を向けられるようになり、視野が広がったことは自分の中で大きく成長した点であり、博士進学して良かったことです。また、学会発表や留学などの研究活動を通して自分の力でできることが増えることで自分に自信を持てるようになり、何にでも積極的に挑戦できるようになったことも、博士進学したからこその自分の強みです。
卓越大学院プログラムでは、企業でインターンシップを行ったことで、大学と企業の違いを自分の目で確かめることができ、進路選択の大きな助けになりました。また、ラボローテーションでは医学分野の研究を体験しましたが、当時は自分の将来に繋がるとは思っていませんでした。しかし、現在担当している仕事は医学分野の知識も必要であり、その時の経験が少なからず役立っているため、どんなことでも経験することの大切さを実感しています。

03 修了後のキャリアと後輩へのメッセージ

未経験の分野でも、博士後期課程で培った力が重要

私の研究テーマは産業界に直結するものではなかったので、自分の専門にはそれほどこだわらず、新しい分野に挑戦したいという思いで就職活動に臨みました。また、若手のうちから積極的に発言して仕事を進めることができる環境で働きたいという気持ちも重視しました。化学メーカーに就職し約1年が経過した現在は、新規事業の探索からマーケティングまで広く携わっています。マーケティングでは分野の最新動向を追うことが必要不可欠であり、そのための情報収集能力は博士後期課程で養われた力だと思います。また、博士後期課程までの研究活動で身に付けた資料作成や発表スキルは社会人になっても変わらず重要だと実感しています。
マーケティングの仕事は新鮮でありながら自分がこれまで培ってきたことも活かせるため、大変である以上に楽しいです。社内外問わず色々な人と話をして多くのことを学ぶことができ、毎日が充実しています。今の仕事は自分がこれからの会社を支えていく一員であるということを常に意識でき、非常にやりがいを感じているので、まずは携わっている新規事業を市場に出せるように頑張りたいです。その後は、新規事業のタネを自分で見つけ、育てていきたいです。
後輩の皆さんは、これから研究活動や博士進学でたくさんのチャンスや困難に出会うと思います。その一つ一つの経験は必ず成長に繋がります。失敗も大事な経験です。後輩の皆さんには失敗を恐れず、楽しむことを忘れず、積極的に挑戦し、得られた経験を自分のものにしてほしいと思います。そして、修了する頃には周りに誇れる自分の強みを見つけて、世界で活躍してほしいと思います。